きのこボックス-あるホテルマンの戯言-

ホテルの仕事、日々のこと、映画、記憶の整理、色々詰め込みます

日常の中の「音」を今一度聞き直そう

日常生活における「音」はみなさんにとってはどのようなものになるでしょうか。

心地よい音、雑音、メロディー、風の音、川のせせらぎ、虫の鳴き声・・・。

僕達の生活の中には色々な音があります。

それらを収集し、分析し、活用するのが「サウンドスケープ」という学問です。

 

カナダの音楽家のマリーシェーファーが提唱した概念なんですけど、日本ではあまり浸透していなくて研究論文すらあまり見つからないドマイナーな学問です。

サウンドスケープは日本では「音の風景」といわれていまして、聴覚で風景を捉えることが最大のキモです。

これにちょっぴり影響を受けた環境省が「残したい日本の音風景100選」というものを選定し、日本各地の音風景を公募してその中で100コ選んでそれらを将来に残そうという事業です。

詳しいことはこちらを見てください。

環境省選定 残したい日本の音風景100選

この100コの中に僕の地元が選ばれていたので、サウンドスケープについて研究をしようと思ったのです。

 

実際に研究をし始めると非常に面白かったです。

サウンドスケープは研究方法が未だ確立していなくて、僕は京都でサウンドスケープの研究をしてCD作成や教育を行っている小松正史先生の研究方法を参考に行いました。

かいつまんで説明すると、まず音を機器で録音、収集し、それをどのような音があるのか分析、分類。その後、それらの音の種類を元にアンケート調査票を作成し聞き取り調査を行う。この三段階に分けて研究を進めました。

 

「音」と一言で言っても色々あるんです。

また、音はその地域の特色を強く表します。城下町や教会が町の中心となっている地域では鐘の音がよく聞こえたり、水に恵まれた地域では川のせせらぎ。自然に囲まれた地域では虫や鳥の鳴き声がよく聞こえます。

その地域の音は、地域に住む人々ー共同体ーの結びつきや関係を強くする性質があると僕は考えました。

鐘の音で集まりお祈りを捧げる。サイレンで街全体の防災意識を上げる。お祭りの賑わいの音で子どもたちが集まる。

こうした音が、長年に渡り地域に浸透していき、伝統的な音や忘れられない音になるのではないかと思います。

また、ある音を聞くと何か思い出す時ありますよね?

このような場合は、音はある記憶を連想させる装置として働くことも明確になりました。

 

一応、僕は大学で地理学を専攻しているんですけど、正直地理は嫌いです。

地図も判読出来ない。地層も覚えられない。でも、地理って一言で言っても色々あるんです。みなさんが知っている地理といえば地図とか地形とかだと思いますが、人口地理学、歴史地理学、農村地理学、都市地理学、というように人文系から理系まで幅広くカバーして学べるのが地理学なのです。すごいですねー。新たな世界を発見したコロンブスの気持ちがわかりました。

そんなこんなで、地理が嫌いなので地理っぽくないむしろ地理ではないことを研究しようと思い、サウンドスケープを選んだわけです。

研究はあまりうまくは行きませんでした(特にアンケート)が、楽しかったですね。学部内で誰も聞いたことない研究したことない分野を、教授の力も借りながら終わらせたことは、多分僕の中で小さな自信になっていくでしょう。やっぱり大学の研究は楽しいです。

大学は就職予備校と言われてますが、ぶっちゃけ今の日本の大学はその通りです。悲しいことながら。ですが、僕みたいに研究は上手く行かなくてグダグダな結果でも、勉強したことは決して無駄にはならないと思います。例えそれが就職に有利不利と言われても。やりたいことをやればいい、だってそれが大学ですから。

 

話がすごく反れてしまいましたが、「音」は僕達の生活には欠かせないモノです。

「音」を雑音として捉えて消してしまうのか。はたまた地域の特色として残して活用していくのか。

今一度、「音」を聞き直してみては?